シジュウカラガンを見に行く

2020.10.06

10月。雁の季節真っただ中である。美唄市の宮島沼ではマガンの数が6万羽を越えたと、昨日のニュースは伝えていた。釧路地方でも、先月から塘路湖やシラルトロ湖にヒシクイの群れが翼を休めているのが見られる。雁たちは皆、北の繁殖地から本州方面の越冬地へ向かう旅の途中で北海道各地の湖沼に立ち寄っているわけだ。

 

 

雁の仲間は鴨に比べると種類が少なく、ひと昔前まではマガンとヒシクイしか簡単には見られない鳥だった。ハクガンやシジュウカラガン、カリガネ、サカツラガンなどは”珍客”で圧倒的に数が少なく、しかもマガンなどの大群の中にいるため探し出すのは至難の業。見ることはほとんど不可能な鳥だった。しかし、ここ20年ほどの間に、見る見るうちにハクガンとシジュウカラガンは渡来数が増え、今では、時期と場所を間違えなければほぼ確実に姿を見ることができるようになった。
日米露の、国境を越えての国際的な保護増殖活動の成果である。絶滅に近い状態だった鳥たちの見事な復活劇として知られている。
中でもいち早く数が増え始めたのがシジュウカラガンだ。越冬地の宮城県や秋田県だけでなく、寄留地の北海道・十勝川下流域などでは10年以上前からシジュウカラガンだけの群れが定期的に観察できるようになった。今では計5,000羽以上が日本に渡来しているという。
黒い顔に白い頬という外見から、小鳥のシジュウカラに似たイメージということでシジュウカラガンと名付けられた小型のガン類で、容姿はグースの名がふさわしい。ほぼ土色一色のマガンとヒシクイに比べれば色彩的にも見栄えがするし、全体的にかわいらしい感じのする雁である。
雁は本州では冬の鳥だが、北海道では秋と春の渡り期の季節の風物だ。秋は9月から11月前半まで。決して長い期間ではない。北海道の野鳥に関心ある人なら10月頃の雁渡来地巡りは欠かせない。
私は、今年も10月に入ってすぐ浦幌町の十勝川河口周辺へその姿を見に行った。多数のヒシクイに混じってシジュウカラガンたちの元気な姿も見え、季節の移ろいを感じる一日となった。
浦幌町は釧路市の西隣の町。シジュウカラガンが群れで翼を休める場所からはわずか10kmほどで釧路市音別である。このペースでシジュウカラガンが増えて行けば、音別の湿地あたりに現れる日もそう遠くないことだろう。

 

 

バードコラム一覧に戻る

ページトップに戻る