オオルリに会いたい
2021.05.21
5月。北海道もいよいよ本格的な夏鳥のシーズン到来だ。ゴールデンウィークの頃が、北海道ではちょうど夏鳥渡来ラッシュの時期に当たり、姿も声も美しい小鳥たちが勢ぞろいする。中でも”青い鳥”オオルリは人気者だ。深い青色の宝石ラピスラズリにも例えられるその色は、一度見たら忘れられない存在感がある。
オオルリの色に感激してバードウォッチングを始めた人が多いと言われるが、じつは私も初めてフィールドで実物のオオルリを見た時の感動は忘れられない。もう40年近くも前のことだが、何か、この世のものとは思えない不思議な色に見えた。例えようのない美しさの生き物が自分と同じ空間にいて、自分と同じ空気を吸って、そこに生きている…。こういう感覚に陥った出会いは後にも先にもオオルリ以外ない。
後から知ったことだが、じつは、オオルリの色は青い色素によるものではない。構造色と言って、シャボン玉と同じように、そのもの自体には色がなく、微細な分子構造によって光が干渉するために色づいて見えるのだそうだ。これが、オオルリの色が何ともいえない不思議な感覚をもたらす理由なのだろう。
写真は色素で色を再現するため、厳密な意味ではオオルリの青い色を正確に写真で再現することは理論上不可能だ。写真家として、オオルリの色の不思議さを正確に伝えられないことは残念でならない。オオルリの色の感激は、実際にフィールドで見てこそ、なのである。
最近、幸せになるためにオオルリに会いたいと考える人が増えてきているらしい。どうやら童話『青い鳥』に端を発する価値観のようだ。ご存知、本当の幸せはあちこち探し回っても見つからず、気が付けば身近なところにあったという寓話だ。
確かに、オオルリを見ると幸せな気持ちになるものではある。ただ、それはメーテルリンクが意図した「幸福」の意味とはちょっと違うような気がするのだが。