マキノセンニュウを探して
2021.07.02
センニュウ類は、あまり注目されないようだが、北海道らしい鳥種の一群である。シマセンニュウ、エゾセンニュウ、マキノセンニュウは、いずれも国内繁殖地は北海道のみ。初夏の北海道の草原になくてはならない存在であり、また数も多い。国内のメジャーなセンニュウ類は他にウチヤマセンニュウとオオセッカがいるが、この2種は分布はとても局地的でポピュラーな存在とは言えない。北海道にセンニュウ類が多いのは、北海道の草原環境の豊かさを物語るものだと思う。
センニュウは漢字では「仙入」や「仙遊」と書き、一説には仙人のように自由気ままに暮らしていることが語源と言われるが、定説には至らず、語源が明らかになっていない鳥名のひとつだ。草むらの中に潜むように暮らすことから「潜入」という字を当てることもあり、いずれにせよ地味な褐色の羽色でもあり、目立たない存在には違いない。
これらの中で、近年、マキノセンニュウが減ってきているとの報告がある。そう言われれば、数年前、私も最近マキノセンニュウを見ていないと気付いて3シーズンほど精力的にマキノセンニュウを探してみたことがあった。
道東では釧路・根室地方だけでなく、オホーツク海側まで含めマキノセンニュウの生息に適した海岸草原がたくさんある。6、7月にそういう場所を訪れた際、マキノセンニュウを最優先で探してみたのだ。その結果、思っていた以上に探し出すことができてちょっと安心したが、改めてこの鳥の見つけ難さを実感した。
「潜入」の名の通り、普段は茂みの中に身を潜めて暮らしているため全くその存在に気付かない。見通しのきく場に出てきてさえずる時だけがこの鳥を見るチャンスと言ってよい。しかも、さえずる回数は他の小鳥たちよりかなり少なく、また早朝に限られているという。マキノセンニュウを撮影しようとすれば、日の出直後の1時間ほどしかチャンスがないのだと聞いた。人目につきにくいわけだ。
思えば、30年ほど前、マキノセンニュウを初めて見たのも早朝の野付半島でのことだった。抑揚のない高い声で「チリリリリリリリリー」と長く鳴く虫の音のような声が印象的だった。その時、私は北海道に転居してきて2年目。本州では見たことのないその姿に、自分が今北海道にいることを実感し、感動したことを覚えている。
最近の”マキノセンニュウ探し”では、日没直前の時間帯にもさえずっている姿を見ることができた。早朝だけでなく、夕刻や夜間にもさえずると書かれた図鑑もある。この習性を知って探せば、もっともっと出会いの機会は増えるだろうと思う。